レジオネラ菌感染症

平成10年、東京都内の老人ホームの24時間風呂で菌が繁殖し、入所者からレジオネラ菌による集団感染が発生、1名死亡。と翌年2月に新聞各紙で報道されました。 これにより、日常の中に聞き慣れない「レジオネラ」という感染症が潜んでいる事が分かり、ビル等の空調冷却塔に生息するレジオネラ菌が社会問題になりました。

レジオネラ症の発見は、1976年にアメリカ・フィラデルフィアのホテルで開かれた在郷・大役軍人年次大会で、冷却塔から飛散したレジオネラ菌を含む飛沫を吸引し、死者がでた集団感染事故がきっかけです。

レジオネラ症は、平成11年4月1日施行「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において、4類感染症に指定、医師による届出が必要になり、翌年7月31日までに145例のレジオネラ症患者が報告され、推定感染源が記載された報告は69例の中で、入浴施設等が59例(温泉・公共入浴施設等52例、24時間風呂7例)と86%を占めていました。

レジオネラ菌は、土や水などにごく普通にいる細菌で、水があればどこでも繁殖し、日常生活で接触する可能性の高い菌です。人への感染は、この菌を含む水粒子を吸引、汚染された水を誤嚥、吸収した場合に起き、菌が混入した水に触れただけでは発症せず、人から人への感染もありません(集団感染は、共通の感染源から感染)。しかしこの感染症は、幼児や高齢者、他の病気等により身体の抵抗力が低下している人に発症の恐れが多いと言われています。


多発するレジオネラ菌の集団感染

旧厚生省研究班の調査で1975年〜92年までの14年間で86例にすぎなかったレジオネラ症感染者が、99年〜01年の3年間で約290人にも達し、その内31人が死亡しました。 感染源は、入浴施設が全体の3/4を占めていると報告されています。

また、東京都が行った特別養護老人ホームの調査では、24時間風呂等の循環式浴槽(塩素主体で一部オゾン・紫外線処理など)の63.8%からレジオネラ菌が検出されています。
最近の主な発生事例
平成12年 3月 静岡県掛川市の温泉利用の入浴施設で23人感染、2人死亡
平成12年 4月 山形県大江町の温泉利用の入浴施設で2人感染
平成12年 6月 茨城県石岡市の総合福祉センター内の入浴施設で、42人感染、3人死亡
平成12年 7月 愛知県名古屋市の大学附属病院の24時間風呂で1人感染、1人死亡
平成14年 1月 東京都板橋区の公衆浴場の薬湯で1人感染、1人死亡
平成14年 8月 宮崎県日向市の温泉施設で934人感染、7人死亡
平成14年 8月 鹿児島県東郷町の温泉施設で4人感染、1人死亡


レジオネラ感染を防止する為には・・・

@ 完全な殺菌が可能な循環ろ過機を使用する。
 最近、レジオネラ対策のために、ろ過機の導入を止めて、毎日完全換水を行えば大丈夫という考えがでてきております。しかし、毎日の換水は安全なように思えますが、現実的には保菌者が入浴した場合、水の入替え・清掃を行うまで菌が増殖する可能性があります。しかも、大腸菌等のように二次感染が心配される菌では大事故の可能性があります。

A 塩素の力を過信しない。
 厚生労働省は、0.2〜0.4ppmの塩素濃度を2時間以上、補給水給湯温度60℃以上という指針を出しております。しかし、これを守っている施設でもレジオネラ菌が検出されている事から、濃度管理さえしておけば大丈夫という考え方は成り立ちません。

B 温泉・薬湯等の特殊湯は気をつける。
 一部の温泉や薬湯などでは塩素の殺菌力が活かせない場合がある事が当協議会の調査で解っております。特に、施設の建設時には計画のなかった薬湯については、東京都板橋区の例のように、塩素を投入していても、残留塩素が検出されない(塩素が消費された)状態になることがあるため注意が必要です。

C 逆洗を必ず行う
 ろ過機内でのレジオネラ菌等の繁殖を防ぐ為には、定期的な逆洗の必要があります。これは、ろ材内にたまった汚れを取り除くもので、定期的に確実に行われないと、ろ過機内での細菌の繁殖につながります。特に、一般的に利用されている砂ろ過方式では逆洗時間を充分に取ることが重要になります。